円形脱毛症とは
「円形脱毛症」とは、本来は体を病原体から守る役割を担う免疫システムが正常に作用せず、髪の毛のもととなる毛包細胞を誤って攻撃し、損傷を引き起こしてしまう疾患です。
なぜ免疫システムが突然暴走するのかは未だに明らかになっていません。
しかし、感染症や精神的ストレスが発症に寄与すること、また家族歴や他の自己免疫疾患の存在がリスクを高めることが知られています。
多くの人が円形脱毛症の原因をストレスだけと思いがちですが、実際には自己免疫反応が根本的な原因であり、ストレスは単なる一因です。
円形脱毛症の症状タイプ
単発型
単発型の円形脱毛症は、円形脱毛症の中で最も一般的な形態です。
多くの人が想像する「10円ハゲ」と呼ばれるものがこれに該当します。
自然治癒することが多いものの、一部のケースではより広範な脱毛へと進行することがあります。
多発型
多発型円形脱毛症は、単発型円形脱毛症が複数発生する形態です。
このタイプは一度治癒しても再発しやすいという特徴があります。
全頭型
全頭型の円形脱毛症は、頭全体の髪が抜ける状態を指します。
このタイプは多くの場合、多発型の円形脱毛症から進行する形で発生します。
汎発型
汎発型円形脱毛症は、頭髪だけでなく眉毛、まつ毛、脇毛、すね毛を含む全身の毛が抜けるタイプの円形脱毛症です。
円形脱毛症の中でも治療が最も難しいとされています。
男女別の円形脱毛症になる誘因・原因
【男性・女性】自己免疫疾患
私たちの体は通常、免疫系によって外部の侵入物から守られていますが、この免疫系に異常が生じると自身の体の一部を外敵と見なして攻撃することがあります。
円形脱毛症では、このような異常が生じることで、健康な毛根が攻撃されるため突然の髪の毛の抜け落ちが生じます。
【男性・女性】ストレス
精神的なストレスが交感神経を優位にさせます。
これにより心臓の鼓動や呼吸が速まり、体温が上昇することで体はストレスと戦う準備をします。
しかし、ストレスが長期間続くと、交感神経の機能に異常が生じ、血管が収縮し、髪の毛への栄養供給が困難になることがあります。
さらに、ストレスが自己免疫疾患の発症にも影響を与えると考えられています。
【男性・女性】アトピー性皮膚炎
アトピー素因とは、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支炎などの疾患を指し、これらは円形脱毛症の発症と深い関連があるとされています。
実際、円形脱毛症を持つ人の40%以上が何らかのアトピー素因を持っているとされており、これらの状態が互いに影響を与え合っている可能性が考えられます。
【女性】出産
女性ホルモンは発毛を促進する効果があります。
そして、妊娠中は女性ホルモンのレベルが通常の100倍以上に増加します。
しかし、出産後はこれらのホルモン値が急速に通常レベルに戻るため、多くの女性が急激な抜け毛を経験します。
これは「産後抜け毛」として知られており、一般的ですが、この時期に円形脱毛症を発症することもあります。
さらに、出産や育児に伴うストレスも、円形脱毛症の発症に寄与すると考えられています。
円形脱毛症を繰り返す原因
多発型円形脱毛症が繰り返される原因には、様々なものが考えられます。
主に自己免疫疾患、アトピー素因、遺伝が根本的な原因とされますが、その進行が続く理由には以下のような追加的な要因が影響している可能性があります。
過度のストレス
ストレスが原因で血行が悪くなり、頭部の血流が滞ることで毛根に必要な栄養が届かず、髪の成長が阻害されることがあります。
ホルモンバランスの乱れ
生活の乱れや睡眠不足がホルモンバランスを崩し、それが直接的に脱毛を引き起こすことがあります。
このような場合には、医師の診断と治療に加えて、ライフスタイルの見直しやストレス管理も重要です。
円形脱毛症の治療・治し方
外用薬(塗り薬)
円形脱毛症の治療には、様々な外用薬が使用されることがあります。
主に用いられる治療薬は以下の通りです
- ステロイド外用薬
- ミノキシジル外用薬
- 塩化カルプロニウム外用薬
これらの薬剤は、それぞれの症状や進行度に応じて医師によって処方され、適切な使用が推奨されます。
内服薬(飲み薬)
円形脱毛症の治療には外用薬だけでなく、内服薬も使用されることがあります。
主な治療用内服薬には以下のものがあります。
- ステロイド内服薬
- JAK阻害薬(オルミエント)
- セファランチン
- 抗アレルギー薬(第2世代抗ヒスタミン薬)
これらの内服薬は、症状や個々の患者様の状態に応じて選ばれ、適切な管理のもとで使用されます。
紫外線療法
紫外線療法は、アトピー性皮膚炎を含む様々な皮膚疾患の治療に用いられます。
この治療は通常、数ヶ月間にわたり1、2週間ごとに行われます。
副作用としては、かゆみや、水ぶくれ、ヒリヒリ感などが生じることがあります。
「エキシマライト」を用いた円形脱毛症の治療
当院では、円形脱毛症に対する紫外線療法において、エキシマライトという治療器を導入しています。
人体に有害な波長をカットし、治療効果のある波長(308nm)のみを照射します。紫外線によって、過剰反応を起こしている免疫を抑制することで、脱毛などの皮膚の症状の改善を図ります。
局所免疫療法
局所免疫療法は、人工的なかぶれを引き起こし、発毛を促進させる治療法です。
この方法は特に広範囲にわたる脱毛があるケースや子どもにも使用されることが多いです。
約90%の患者様に効果が見込まれるとされていますが、副作用として蕁麻疹、かぶれ、リンパ節の腫れなどが生じることがあります。
さらに、蕁麻疹、湿疹、アトピー性皮膚炎を持つ方は、症状が一時的に悪化する場合があります。治療期間はおおむね半年から1年間とされています。
ステロイド局所注射
ステロイドには免疫機能や炎症を抑制する作用があります。
そのため、円形脱毛症の治療としてステロイド局所注射が利用されることがあります。
この方法ではステロイドを直接、脱毛している部位に注入します。
主に単発型や多発型の円形脱毛症に対して行われますが、副作用のリスクを考慮して子どもへは行われません。
ステロイド点滴
ステロイドの点滴治療は、円形脱毛症の早期重症患者様に対して行われる短期間の集中治療です。
この方法では、3日間という短期間に大量のステロイドを投与し、脱毛の進行を抑えることを目的としています。
ただし、ステロイドの使用が成長障害を引き起こす可能性があるため、子どもには適用されないのが一般的です。
治療中には入院が必要となることが多く、副作用として頭痛、微熱、動悸、不眠、倦怠感などが挙げられます。
よくあるご質問
円形脱毛症とAGAの違いは何ですか?
円形脱毛症は年齢や性別を問わず、誰にでも起こり得ますが、AGAは男性にしか発症しません。
円形脱毛症の場合は特定の時期にまとまった髪が抜けるのに対し、AGAでは徐々に髪の毛が抜け始め、次第に薄毛が進行していくという特徴があります。
円形脱毛症(10円ハゲ)は広がることがありますか?
円形脱毛症が広がる可能性については、実際にはさまざまなパターンが見られます。
円形脱毛症は、一般的にある日突然、原因不明のまま多量の髪の毛が抜け落ちます。
この脱毛は、一箇所に限定されることもあれば、多数の箇所に発生することもあります。
そして、円形脱毛症は徐々に広がるというよりも、特定の箇所から一気に大量の毛が抜けるというパターンが一般的です。
このように、一度に大きな範囲での脱毛が見られることが、円形脱毛症の識別特徴の一つです。
円形脱毛症は自然に治りますか?
軽度であれば、自然治癒する可能性もあります。
円形脱毛症を早く治す方法はありますか?
早期の治癒を希望する場合はクリニックでの相談が推奨されます。
治療により円形脱毛症の回復が早まる可能性があります。